2021/02/27
続篇 巻之五十六 〈12〉 御厨里村の賢夫婦
わが領内御厨里村の農夫六三郎、年四十ばかり。その妻年三十五。
夫婦は年来睦まじくしており、農業に精を出していた。
農に打ち込む時は貢税に心を委ね、秋は昼夜怠らなかった。
ある時、妻が収穫の疲れに居眠りしたのを夫が抱いて水辺に投げ入れた。
妻はその行いを謝り、「元の様にやらせて下さい」と願った。
六三郎もまた疲れて同じく居眠りをしたところ、妻はこれを見て夫を水辺に引きずり連れて行こうとした。
六三郎は驚いて自分がしたことを思い知り、妻に謝った。
それからというもの、夫婦で年貢を全うしようとますます農業に精を出した。
これが村人みなに伝わり、夫婦を見習う様になったという。
またこれ等の至誠には夫婦自然と裕福になり、田畑も多く実る様になって、後に富になったと云う。
- 関連記事
-
- 三篇 巻之九 〈7〉 鰻と梅の食べ合わせに思う
- 続篇 巻之五十六 〈12〉 御厨里村の賢夫婦
- 巻之六十九 〈10〉 トオハチゴモン(十八五文)
スポンサーサイト
コメント