続篇 巻之八十六 〈9〉 星

壬辰(天保3、1832年と思われる)12月望(もち、満月)、初更(しょこう、五更の第一、現在の午後7〜9畤)にふと障子をひらいて視ると、空がよく晴れて円月(満月)が東の方角に明るい。

その光に抑えられて、天に星1つない。よく視ると西の方角に星が1つ白光を醸し出して燿々としてる。
その左下四、五尺と見える所に星が1つある。
光はやや劣っているといえども、月光に消されることはない。

わしはあやしく思った。

それで翌日早くに、司天館の安達のもとに、「昨夜の空は如何なるものか」と使いを出して問うた。

曰く。
「このニ星は、五星(水、金、火、木、土)の2つで上なるは木星、いわゆる歳星、下なるは金星、いわゆる太白でございます。
すなわち、今の様に西の方角に現れ運ぶのを退行と云い、東の方角に見えるのを順行と名付けます。
因みに今は木金のニ星は退行の時で、火土水の三星は、地下にあって、却って昼は天上にございます。
この木金が地下に入ると、火土水星は夜に光を天中に顕すのでしょう。
五星が各周天をめぐるのに大いに遅速に影響があるのでしょう。
だから人が視る時に時々同じでなく、定まることはないのでしょう」。

また曰く。
「この節この様にあれば、来歳極月(12月)にまた今回と同じであるともいえませんね。何十年の後、また今年の空と同じ様になるでしょう。今は予見が難しいですが」。

また曰く。
「かのニ星は、当月五、六日の頃にともに去るのはなく、月の輪の中間にあるとみられます」。

わしの内の者が見たのは、わしが見るよりも前で、ニ星の間はより近かったと云う。
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