巻之十九 〈19〉 才能

世に名高い人は、才能も優れた所がある。
服部南郭(はっとりなんかく、江戸中期の儒者、1683~1759)に酒宴の席で、伎楽の小曲によい歌詞をのぞんだところ、唐詩を訳して示すと、満坐は拍手して感賞したと云う。

 路のほとりの青柳を、あれ春風が吹わいな、
 わしが心のやるせなさ、
 思ふとの子に知らせたや

これは、唐詩の『陌頭楊柳枝、已被春風吹、妾心正断絶、君思何得知』の訳である。
また妓女扇を出して染筆を乞うと、大江千里月、小野小町花と書いて与えたと〈一説には、下句を春道列樹山と云う言い方もある。どちらが是なのか〉。

また俳人の其角(宝井其角、1661~1707)も宴席で、その頃の名のある書家と同坐して、様々な物を書き、終わりに金屏風を出して書と句を乞うた。
「酒を過ぎてはや腕も疲れたので、ゆるされし」と云うのを、「是非!是非!」と云えば、「それならば」と『此の所小便無用』と書きつけた。

乞うた者は甚だしく不興に見えたが、傍から色々おだてて、密かに其角に「改めて書いてくだされ」と云うと、其角はその場で筆をとり、その下に『花の山』と3文字を加えると、「さすが其角よ、一句よ」と満堂感嘆して興ぜたと。

また狩野栄川院〈典信 みちのぶ、1730~1790〉は、一侯家で席画(会合で注文を受け即座に絵を描くこと)の折に、白木箱に納めた百人一首歌留多を持ち出して、「箱に何なりとも一筆」と所望があったので、すなわちゆりの花を色を着けて描いたという。
百合と云うにおいて考えつくのは、はたらいたことである〈林話す〉
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