巻之十九 〈22〉 矍鑠(かくしゃく)と生きるお殿さまたち

また林曰く。
今より3代前の秋元但馬守は御役を勤めて1度引いて、また再び勤めた人である。
妾の年齢が25歳に満ちると手当てして縁付けする。
少より老に至るまで幾人もその様に扱ってきたという。

その意図は、人情はたとえ夫妻に於いても、そのはじめの容色に愛する所があれば、終まで長久なる者である。
30歳も越えて容顔も衰(おとろふ)れば、自ら(女性自身の自分に対する)の愛情が薄くなっていく。

人の生涯に係ることなので、早く縁付けするがよいと言われたという。
実に仁人の用心と言えるだろう。

またこれも今より3代前の鳥居丹波守もまた重ねて勤めた人である。
中年に夫人が病で亡くなった後、継室も無く常日頃は表住居で、妾を長屋に置いていた。

公私閑暇の時に、その長屋へ行き、厨下から酒食を運ばせ、弦歌酔飽して帰られる事が折々あるばかりだった。そうして一生を送られた。

色に溺れず、女人にまみえる筈も無く、かつその身の摂生にもなる一種の趣向でこそあるだろう。

それ故にか、齢高きまで矍鑠の様子は、目の当たりにした。
何れ重い任務をも勤めらる人の大衆に優れた所は、何かに就て有るものである。
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