続篇 巻之四十一 〈5〉 曽呂利、蔵に袋かけを願う

数機屋橋内に永井氏を訪ねた。
主人は庭前の4、5間ばかりの庫を指差して言った。

「糀町の岩城升屋と云う商家に、あれ位の庫程の土蔵がありましてな。度々の火災に遭っても消失する事はありませぬ。その故を尋ねると、常に大きな皮袋を用意して火災と見るとその皮を庫に覆い水を注ぐのですよ。これで消失しないそうです」。

これに就いて思い出した。
今その出典を忘れたが、記憶したままにここに記す。

豊臣太閤はかつて曽呂利新左衛門の滑稽さを愛して普段から身近におかれていた。

ある時太閤曰く。
「わしは汝の才を愛す。依って汝の欲しい物を与えたい。すなわちそれを取らそう」。

曽呂利は答えた。
「かつて望む思いはございませんでした。されども台命には背きません。願わくは紙袋1つに容るる物を賜りございます」。

太閤曰く。
「小さき願いよの。紙袋を持って来るがよかろう。その容るる物を与えよう」。

曽呂利は喜んでその場を退いた。それから曽呂利は10日程出仕しなかった。

太閤はあやしく思い、人を使わし様子をうかがった。
帰って曰く。「曽呂利は袋を接(つ)ぐ事に懸命になっておりました。それで出仕を廃めます」と。

そこで公は人を遣わしてその事を問わせた。
答えはこうだった。「紙袋でございます」。使者曰く。「何の為に袋は巨大なるか」。
曽呂利は答えた。「この袋で御米倉に被せ、御倉の積んである粟を賜わりとうございます」。

使者は公の元へ返って告げた。
公は笑って曰く。「紙袋1つといえばまことにその通りじゃ。されども倉1つの粟は与え難いのう」と大いに笑われたとぞ。
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