巻之ニ十六 〈5〉 蛟(みずち)

わしの小臣某は、一夜小舟に乗って海釣りをしていた。
時に月が白く風は清らかだった。
白岳の方を臨むと、山頂より雲が一帯生じていた。
白色で綿々していた。
それはだんだん広がり遂には半天になり凝りてまるで茶碗の様である。

その傍にはまた雲が生じて白く鱗々している。
するとまたたちまち黒雲が出て、次第に蔓延して東北に行き渡り、暴雨が降って来て浪もまた湧かんばかりの様子だった。

少し時が経ち、空は晴れた。
この雨山の東北のみ降って西南は降らなかったという。

わしは思うにこれは蛟の所為だろう。
蛟は世にいう雨竜と呼ぶもので、山腹の土中に居るものであると。
『荒政輯(シュウ)要』にその害を除き方を載せている。
また世にほうらぬけと云って、処々の山半分がにわかに振動して雷雨誨冥(らいうかいめい、雷と雨が起こり暗闇となる)にして何か飛び出るものがあった。

これをほうらが土中に居る様だと云えども、誰も正しく見た者はいない
これまた蛟が地中から出たものと云う。
淇園(皆川淇園、みなかわきえん、江戸時代の儒学者、1735〜1807)先生は嘗て話されたのは、ある士人某の所で寓した中での事だという。
1日その庭を見ていると竹垣の小口から白い気が生じて繊々として糸の様である。
見るうちに1丈ばかり立ち上り、遂にひとかたまりの小丸の様である。
またとび石の処を見ると、平石の上にわたり3、4尺ばかり濡れて雨水の様である。

その人は不思議に思い、かの竹垣の小口を窺い見ると、気が生じた竹中に蜥蜴がいたとのこと。
この蟲は長身4足で蛟の類だと。

するとこの属はみな雨を起こすものであると。

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