三篇 巻之11 〈4〉 『ヤハタ』の森について

聞いた話である。
上総下総の国境の道傍に小森がある。
『ヤハタの森』と呼ぶ。
その裏を看ると向こうへ見通すほどの狭い林である。
以前より、この裏に入る者は1人としてまた出ることはなかった。
人は怪場として、やはた知らずと云った。
その旨は、人は未だこの林の中を知る者はいないと云う意味である。

また聞いた。
かつて水戸光圀卿がこの辺を(お付きの者に)行き過ぎようと、この林の中に入ろうとの給う。
左右の者は堅く拒んだ。
卿は「何ごとかあるのか」と1人入り、出給わるまでに良(やや)久しいことであった。
従行の人はみな色を失った。
然るに、卿はやや有ってい出た。
その顔容はいつもと違う。かつ曰く。
「実に怪しき処であった」と他に言いはなかった。
こうして、後久しくしての給うには、

「かつて『ヤハタ』に入ったときは、その中に白(白交、本文)髪の狐の翁が居たが、曰く。『何たる故にこの処に来ます。昔よりここに到る者は生きて帰ることはありませぬ』。また辺りを見せられたが、枯れ骨が累積しておった。(狐は)指して曰く。『君も還ることはよしとしないが、賢明さを世に聞こゆ。今留まらぬよう。速く出給われよ。復再び来給うな』と云って別れたものよ。この余りに畏怖があってな、(このことは)人に語るには及ばず」と人にの給われた。

ある人また曰く。
「この処は八幡殿義家の陣跡と云い伝わっている」と。
これは『ヤハタ』と称する説だろうか。また果たして真なのか。
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