三篇 巻之十七 〈九〉 沖の神島、地の神島(コウジマ)

わしの領分小値賀は、隔土(ハナレドコロ)で肥前の大島である。南辺の僻地なので、領主もあまり行かない。何れの先代にか、かの地巡視された折〈この小値賀には、神島(コウジマ)といって両所に神祠がある。人は沖の神島、地の神島と云う〉乗船が神島の前を通るとき、鳥居の上に白髪の老人が現れた。公はご神体であると、随行者に示して拝むよう令(しむ)るが、みな視えずと答えた。ただ用心某が視ることが出来た。正しいご神体ではなく、何者なのだろうかと云っている。
また巨綱島氏が伝える。かの地へ渡るは、雄香院殿のみである。この時も老沖縄が現れ、公は拝敬されたが、人に伝えると視えずと云ったという。
だからこの二つの事は、雄公の時にお姿が現れたと云うのか。また現れた方は別の方と云うのか。いずれにしても、その神の身体を顕されたのだ、不思議なことぞ。
また地の神島に、法印殿が朝鮮国からご帰陣の後奉納されたお刀がある。封人も容易には見難い。島の押役(オサエヤク)は、これを拭う時に拝見するが、革柄で鉄の緑頭のお構(コシラエ)になるので、中刃(ナカゴ)はいかにも上作とわかる。
人が評するには、公の御陣中に常に身につけておられる物を格別に奉献されたと聞こえた。
またある人が云う。沖の神島には、年々大歳の夜に海中に火が現れ、島の神前へ到り全て波間に没す。人は竜王の奉燈と呼んだ。
また云うには。平戸は古の庇羅の島である。南北に十里余り〈五十町程〉、南端は志々伎神社がある。平戸城は北方の海辺である。また極北に山がある。山上に白岳祠〈小石祠〉がある。この神もまた霊がある。商舶および余船に至るまで、平戸を望んで来る者は、時があって夜霧が四方塞いでも、指所を弁ずるなかれ。この時、船中に於いて、かの山祠を祈念すれば、必ず山頭に火光を見分けることが出来る。
船は即これを認めて行けば、すなわち平戸に達する。
全く神の霊火と伝わる。!
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