巻之六十九 九 落とし噺

世にいう落とし噺とは作り事だ。

それでも時として真実を突くことがある。

近くを仕切る吉原町の娼の者がいた。

妾が前に郭中の家に棲んでいた頃、めし使っていた禿童がいた。

また妾にはお客の某から贈られた蓋物(磁器)があった。

妾はことさらにそれを大切にしていた。

それなのにある日の事見当たらない。

禿に云って探すが出て来ない。

妾は禿はどこかへやったのを忘れたのだろうと疑っている。

それで禿を責め立てた。

お前はどこかに置いたのだね、と。

禿は幼いが、納得ならない。

ある日妾が(建物の)上から下を見ていると、禿がいて、貧しい身なりの辻占いをする僧に占いを請うている。

僧曰く。何を占うのか。

待ち人か病人か、それを云ってくれないと応えられないんだよ。

禿云う。どうして何を占ってと云わなきゃなんないの。

だったら別にお坊さんに聞かなくてもいいや。

(僧が)ならばもしかしたら、失せ物の事かと云うので、禿云う。

いいよ、いいよ。失せ物じゃないけど蓋物なんだもの。

妾、このやり取りを聞いて抱腹した。

関連記事
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

プロフィール

百合の若

Author:百合の若
FC2ブログへようこそ!

検索(全文検索)

記事に含まれる文字を検索します。

最新の記事(全記事表示付き)

訪問者数

(2020.11.25~)

ジャンルランキング

[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
890位
ジャンルランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
歴史
131位
サブジャンルランキングを見る>>

QRコード

QR