巻之一 三六 松阪踊り


わしが幼い頃、祖母の元へ大奥の人という、体躯のいい長身の白髪の婦人が来た。

いかなる縁によるのか、何勤め(なにづとめ、大奥の中の)幼くてよく分からなかった。名はおこなとか云った。

この人に祖母君のあれこれを聞かされ、色々世間話をしている内に、有徳院様(八代将軍吉宗)の時の御踊りをお孫さまにご披露されてはと云うと、心得ておりますとも、と云って、(祖母君は)立上り舞った。

手を右左に上げ下げして、またその掌を打ち、輪の様に行き回るばかりである。

歌は自ら唄い、そこで松阪こへしと云われた。

幼い心に面白くない踊りと思ったが、松阪踊りというものだったということ。

今思えば、古風なことだったと追慕しているところである。


松阪踊り〜伊勢節の盆踊り。伊勢の古市で享保(17161736)ころから行われた。

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