巻之19 〔25〕  諸家の模範  その4

 本田中務殿も、15万石5万石になられた時、人の減少は無かった。
家中一統に3尺手拭いを腰にはさんでいた。

 上杉と伊東両家では、かつぎ商人門内へ入らず。
伊東では世の風俗に移らない。何事も先規にないことはしない。
今時はやる横麻(よこいとに麻、たていとに絹を用いた織物)を着するようというが、役人がいうには麻上下着という法はあるが、横麻上下着と申すことはないとは、合点しない。

 また泉水に雁鴨の羽を切って放すようにとあるのも、庭籠(にわこ)でかうのは先例があり、放し飼いという先例はないのは合点がいかぬ。

 1月に1度ずつ、1日1夜門を閉めて。
家中の上下、何にしても致すことを致す、舞踊り飲食して楽しむ。
翌日6時(朝6時頃)からひっそりと致すよし、隣屋鋪の者の噺である。

 類焼したら、在所で切り組み置いた材木を取り寄せ、跡にまたまた切り組み置く。
平日在所から願いにて、船2艘が入津し、香の物乾物を仕込んでまわした。

 阿波は至って寛で、門の出入りの限りもなく、当番不参のものも、一通り尋ねるばかりで済む。
進物があれば、多くは帳面にのせるばかりで、広間で煮焼きして食べている。
古は諸家ともに左様のよし。
死罪と云う事を聞き伝えず。
大罪人は山入りと云って山の中へ押し込んで置いた。
甚だしくよい国で、天下一の富饒(とみゆたかの意)の由。
勝手に勘定と云っても急度(きっと)はなき由。

 寛にて国をおあさめるのは至って難しい事である。
いかにとなると、小人政をとるなら必ず巌にするものである。
この跡では、君子をあげて政をさせても、人の苦を見て寛にしようとするのは難しい。
これによって黒田如水公は、今時の大名は、脇の下から汗が出るように家来をつかう、と申される事、承った。

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