2021/05/13
巻之19 〔25〕 諸家の模範 その5
土佐は阿波の隣国だが、士民の風俗は大いに異なる由。土佐は国法が甚だ厳しい。
良材が出るので、江戸の普請も在所で切り組む。
何事も先規を守る。
家中の者が、小屋へ来客があれば坐敷へ刀を持って逢う。
正月3ヶ日の内、家中へ料理をくれられ、懇意の者には雑煮を食べさせる。
郷士千余人もこうある由。
250石以上は馬を持ち、正月11日に在国の時、人数揃える。
主人は出馬して野に小屋をかけ、上下一等に料理を出す。
主人はじめ自身湯を斟(く)まれる。
士は相互に給仕いたし、湯ばかりは自身立てて酌む。
この日、立身を申し付ける。
前日、よび状を出す事なくいい渡した。
250石になると、即時に馬上にて供をする。
これによって小身の者と云っても、平日馬の心当をいたし置く由。
家老に深尾縫殿と申て5千石である。
妻を呼ぶ時、一汁二菜に申しつけてるのを、懇意の人が参り、倹約の時節だがあまりな事と云った。
左様であるけれども、800人の膳部で、手廻り成り難くあったが、そのままに致し置いたと云ったのを聞いた。
答えがなくて帰った由。
親の墓に千燈を立て、一燈に1人ずつ警固を置いたという。
この事に限らず何れも慥(たしか)な人に承候物語であるけれども、覚え違いの咄事のある。
聞き置いて覚え違いもあるだろう。
我等その家の事はよく存じているが、左様の事はないと云う人もあるだろうが、上の家でなければ、他の家、または名の違いもあるだろう。
跡方のないという事は、誓文も致すようにしよう。
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