2021/05/18
巻之19 〔25〕 諸家の模範 その15
加賀には乞食がいない。国中へ他国の乞食を入れない。
その故か盗賊放火人がいない。
老人90以上の者には扶持を与える。が、申し立てるのも稀である。
これは扶助ばかりで優礼のないことによるのもと思われる。
外々にもあることだが、賤しい人でも扶助のうえ優礼を加えて、その家の永きかざりになるようにありたいもの。
松平右京殿は、道中で騎馬の人は、駕籠を吊らせず、通して馬に乗る。
乗り掛けは薩摩のように、紺の風呂敷で蒲団をつつみ、上下一統、武器に金紋を用いたと申さず。
佐賀では、博奕禁止を重くしている。が下々は過料壱貫文である。
士は何かの僉議に及ばず改易になる、子孫まで禁錮される。
その余りの罪は命さえあれば、改易でついには帰参になりよし。
在勤のものが大病を煩うと家老などは格別、その外のものは邸中で死すことはなく、みな外宅(妾宅)をいたし、外宅金が渡る。
まことは葬送が入用になる。
大方は町家をかりて、名題ばかりに、直に駕籠で寺へ参る。
寺は下屋敷の内に禅寺がある。
何宗のものでもその内で葬送を行う。
もっとも上の入用何ほどと云うことの定式がある。
毉(医)師は諸士の下に列する。茶堂はまたその下である。
仙台で講釈はじめに儒者は若年寄りの支配だが、その日はそのうえに着坐して、坐敷の牀(ゆか)に聖像がある。
主君は拝され坐につき、その次に講師が拝し、主君と相対され1尺ほど上に坐して、講釈を致すよし。
長州では、春の釈奠には、長州侯が出られる。
また釈奠のあとには養老の礼がある。
国老35人、庶老35人、手廻頭、医師など相伴して、料理を給い、家老出て、庶老まで挨拶がある。
何れも綿を賜る。その日のかかりは、表用人が一切のことを引き受け勤める。
手廻りの頭は家老の次席で重い職のよし、うけたまわる。
上杉殿の先供を手明組と申す。
米沢で御馬添と申す格の内から、式台の間と云う坐敷の庭を36貫目の石をかかえて、3返廻る役にあたりよし。
されども供先で力を出せば、致し方あるべきことになるが、しかられぬまでの首尾によし。
大村殿家中では、加増並びに次男三男を呼び出し者は1代切りである。
されども希なる大功を立てたものは格別に由。
百姓も次男三男に家をもたせること禁制である。
但しその屋敷内に家を建て妻など取るは、何軒でも勝手次第によし。
加賀に乞食のいない訳を承るに鰥寡(かんか)孤独(律令制において国家による救済対象とされた家族構成)、総てたべものがないものは、小屋をたて養われる。
草履、草鞋をつくらせ、年数をつみ、料物がかさなっていけば、それで相応の渡世につかせるよし。
国中のもの利売にかしこく、鏡とぎ、小間物、薬うり、遠国までまわりあるくよし。
続く
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