巻之一 〈一七〉 寄合石川兵庫の母三也子(みやこ)のこと

三也子(みやこ)と云うは、寄合石川兵庫〈四千石〉の生母である。

わしは久しく相知っていたが、貞操温順な性質で和歌を好んだ。

年七十余りに身失せぬ。

その後久しくして石川氏を訪ねて語り、この人の事に及んだ。

石川が云うには、三也は常に桜の花を愛した。

年老いて後、身のよしある寺院に、亡くなり葬る地を卜し、桜の樹を植えてあらかじめ墓標にした。

花時には常にその下に行き、愛でた。

その詠は以下の通り。

  春毎に咲くべき花をたのみつつ

       とはれむ種をけふぞうへける

わしはその志しの優れるを聞いて、益々追悼に堪えず。

よってしるして後に伝える。

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