2020/11/16
巻之一 〈一八〉 大阪の御城の天守にあった金扇の御馬印を守った話し
大阪の御城の天守の第一重には、神祖(家康公)が関ケ原御勝利の時の金扇の御馬印を籠め置き給うた。これを鎮護の思し召された。
何年(年号不審)の頃、その中段より火が出て燃え上がった。
諸人は臨み見て驚き騒いだが、為すべきもなし。
この時に在番の大番衆中川帯刀は御天守に走り登り、御馬印を自ら抱き、御天守から飛下りた。
数丈の石垣をすべり落ちていくと、その身は擦り傷により傷口が悲惨なれど、御馬印はいささかも損壊しなかった。
その事を番頭より陳く聞き、その子某を跡式に仰せつけられた時に、並高を加増して、千石賜れたという。
今某氏の祖先である。
治平の時に当たり、戦国の討ち死に比す御奉公である。
その志のけなげなることは、百載の後に至りて生色あるぞと云える。
- 関連記事
-
- 巻之ニ十三 〈4〉 安芸の寺のディウスの画像
- 巻之一 〈一八〉 大阪の御城の天守にあった金扇の御馬印を守った話し
- 巻之一 〈一ニ〉 天川儀兵衛の話し(赤穂浪士復讐)
スポンサーサイト
コメント