巻之一 〈一八〉 大阪の御城の天守にあった金扇の御馬印を守った話し

大阪の御城の天守の第一重には、神祖(家康公)が関ケ原御勝利の時の金扇の御馬印を籠め置き給うた。これを鎮護の思し召された。

何年(年号不審)の頃、その中段より火が出て燃え上がった。

諸人は臨み見て驚き騒いだが、為すべきもなし。

この時に在番の大番衆中川帯刀は御天守に走り登り、御馬印を自ら抱き、御天守から飛下りた。

数丈の石垣をすべり落ちていくと、その身は擦り傷により傷口が悲惨なれど、御馬印はいささかも損壊しなかった。

その事を番頭より陳く聞き、その子某を跡式に仰せつけられた時に、並高を加増して、千石賜れたという。

今某氏の祖先である。

治平の時に当たり、戦国の討ち死に比す御奉公である。

その志のけなげなることは、百載の後に至りて生色あるぞと云える。

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