三篇 巻之1 〔9〕 緑毛亀

 平戸に野々村某と云う士があった。
嘗て月夜海中に釣りにでて、一物を釣り上げて見ると亀だった。
甲の径(まわ)りは4寸ばかり、尾に毛があり、長(た)けは6寸をこえる。いわゆる緑毛亀である。
口は殊に広く、鈎(つりばり)を銜(くわ)えて口を開く口内は紅色で火が燃えるようにしている。
奇異からだと、緡(つりいと)を絶って亀を海に投げたと云う。

 また近臣篠崎某も、平戸城下黒子嶋辺りの海面で見た亀は、その頭は馬の首の大きさで、頷(あご)下は紅色で美観である。
甲背は見えない。
海中に没するとその臀部を露(あら)わしたので、尾の毛はあったと思われ、赭色であったと。
また先年藩士が領海生月嶋の辺りで見た大亀も〔前編88巻〕、尾の毛があって赤色だったと。
『本綱』の海亀に大小あると云うのは、これらも類か。

 また吾が中の者が、船で淡路を経たとき海中から亀頭を出したに遭遇したが、大きな猫の首のようで、これも甲を見なかった。
(海中に)没するとき尻を露わすと毛があった。蓑のようにして、長からず、灰色だったと。
これまた別種。
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