巻之30 〔3〕  番頭の引き際

 樽屋は江都町三年寄りと称する巨家の一家である。
与左衛門は文化(1804~1818年)の頃官の御金を多く引き負い、数万に及んだことが露顕した。

 時に与左衛門を諫めて自尽(自殺)させた。
時に与左衛門は机に憑(よ)りかかり書き物をしていたが、番頭の言い事はまだすべてではなく、宅前に町奉行所から吏を呼んだ。
与左衛門に御用があるので早く出るようにと云うのを聞いて、番頭は与左衛門の後ろへ廻り、自刃を抜き脇に突き立て、腹を後ろから引き廻して自殺の体になった。

 検死などあったが、自ら罪を知って自死したことになる。
引負1件はほどほどに治って、樽屋の家の退転になならないと云う。
この番頭は町人には稀な武士のような奇特の者だった。
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