三篇 巻之66 〔15〕 高嶋文鳳という女史

 高嶋文鳳という女史はわしのもとにも出入りする。
林家の門人で、頗(すこぶる)学才がある。
書に詳しく、詩を賦(ふ、詩歌をつくること)し、また教義を講じると。

 大城の大奥、貴妃の内に招かれて、教義を講じると聞く。
この婦は、破瓜の頃から男子の情欲を嫌い、潔然と孤立して自若である。

 またその生来を尋ねると、武鑑にも、御酒所高嶋弥兵衛と見えて、その家の女(むすめ)である。
その家ははじめ、神君参州に御座あるころより随(したが)われて、今に至り都下に宅地を賜い、旧来の故で酒造株の外、別に千石の酒造を免ぜられ、今なお別造と称して、無名の酒である。

 わしもしばしば人に贈られるこの酒を試すに、淡であるが厲(はげし)く、褒めたたえるべきだろう。
人またその由来を知り、鳳と識ることがあれば、必ずこの酒を請うて飲なされ。
神君免醸の所である。
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