続篇 巻之61 〔6〕  夢の裏を語る

 ある人が語ったことは、
 近頃ある官毉の何院と称する者が、酒を甚だしく飲み家に帰り休んで居たときに、「御不例(貴人の病の呼び方)につき出るように」と召された。
それで早速出仕して御脉(お脈)を診て、大した御容体でもないので、やや御薬を改めた。
そして家に帰り、その部屋に入るなり、安心の為か忽ち酔いを発して、前後不覚になって床に臥した。

 それから後大奥に入られたが、女員の中から、「その院は、昨夜は御前で不束(ふつつか)なことになったとの由。御容体の窺いは大切な御ことなので、以来の御戒(おいましめ)もあるべきでしょう」と申し上げた。
御諚(おおせ)には、「なるほど、昨夜の某は脉診があったが、それほどの体とも心付かなかった。その上このような戒などは表向きのこと。内向きに言い扱うことではないとの上意である」。

 聞く者はみな感歎して、徳廟の御遺風だと賞したという。これは夢裏に夢を語るの談のみのこと。
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