巻之一 二〇 市川団十郎の慎み深さ

歌舞伎役者の市川団十郎は頗る(すこぶる)文史(しるしぶみ、記録)をあちらこちらに出向いては探しもとめて風雅な心もそなえている。

家業を子に譲り、自らを白猿(その祖は歌舞伎の名人であるが俳諧をたしなみ、その名を柏莚-はくえん-といい、代々その名を継いでいく習わしだが本人は祖にも父にも及ばず下手であるといい、音にかけて代々の柏莚は用いていない)。

小ぶりな別荘を本庄にしつらえ住んでいる。

御放鷹など近辺にお成りの時は(上さまが鷹狩を為さるといって近場にお成りになる時は)人にこう言っている。

「河原者の身だからお通りになる路の側に居ることははばかられる」と。

その時はその場を離れ境の本宅に行くと。

またその生業によりその家は富むが、衣服を新調する時はあえて一色のものを用いず、別の色の布地を継いだものを着用する。

云うには、卑賤の家の者が貧しくないからといって美しい服を着るのは身分の上下を考えぬ行いであると。

また自分以外の俳優はそのかつらに天鵞絨(ビロード)を使うが、白猿は黒い木綿で作るとのこと。

その慎み深さはこの通りである。


第何代目の団十郎か判りませんが、ウィキによると五代目の話の様です。

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