巻之62 〔9〕清衛と云う鳥の話

 昔、唐山に精衛と云う鳥があった。
その母親が災難に遭って海に沈んでしまった。
精衛は、そのことを怨んだ。
この世に海があったから母を失ったのだ。
「海がなければこのようなことは起きなかったのに」。
己もまた深い海で没してしまった。

 その魂はまた鳥になった。
常に群れる鳥である。
海上を飛行し、土砂を含んで海を埋めようと思っていた。

 今その書を引きたいが、忘れた。
ここをわしはいつも愛でている。
すべて人は君に仕え、国に報いたしという志があっても、この事が成り立たないのを知ってやめるのはこの精衛にも劣るだろう。

 この事が成らないと知っても身が尽きるまで遂げようとするのが想いを立てることといえるだろう。

 精衛(せいえい)の、土砂で大海を埋めようと謀るのは、とても遂げられぬ事だが、母が海にて命を落とした事を怨む志は、億万年もやまぬその想いにわしは心惹かれるのだ。

 『山海経』に、発鳩の山鳥があったが死する。
首は美しく、口ばしは白く、足は赤い。
名を精衛という。
いつも西山の木や石を銜(くわ)えていき、これを東海に沈める(李白の詩にも、区区たる精衛鳥、木をくわえて空を飛び哀しげになく。自らを嘆くという)。
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