巻之28 (24)  某の覚悟、種々ある覚悟

 人の覚悟は種々あるものだ。
ある人が宴席で語った。

 当春に大的上覧のとき、某のと云う人が、的に向かい弓を打ちあげた。
手はぶらぶらとしてじかに後ろに倒れた。
両足は天に向かう有様だったという(これは例射術上覧のとき気後れするので、内々に酒を呑んで気を大きくしていたという。
この人も酔が過ぎていた)。

 人々は騒ぎ、病だとして御前を立ち退かそうとしたが、その人は従わなかった。
「射術上覧の為に出たのであって退かぬ」と云って、やはり矢をつがえ的に向かった。
が、手先が定まらぬと矢さきも狂うもので、「危うし!」と番頭なとか出てきた。
御目付も出合い、ようやく休憩所にひき戻し、それから帰宅させた、ようだった。

 久しくして酔が醒めかつその事を聞いて、たいそう恥ずかしく思ったが、そのおさめる知恵がなかった。

 ただ呆然としていたが、数日して決心したのは、「われは御前前にてこのような失態を演じてしまったが、そもそも酒が元であった。
この身はこれまで!人に向ける面はなし。
この上は他になし。死するのみ!」と云った。 

 それからというもの日々酒を絶やさなかった。
勉強豪飲、遂に酒により病になり、死んだという。

 これは当人の安心決定であるけれども、他に道を見いだせなかったか。

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