巻之11〔22〕  茶道、不昧流

 松平不昧(ふまい)は(雲州侯出羽守治卿。引退しての名)茶に名高い人だとよ。
ある時、芝辺の茶店で憩われたとき、その釜を見られたんだと。
そして「これぞ真の蘆屋釜よ」と曰れたんだね。

 店主は大いに喜び、他日そのその釜の箱を作って、不昧の邸に持ってきて、「蘆屋釜と銘を書いて賜りたく存じます」と請願したと。

 不昧は拒まず留め置くおくこと数日経った。
店主はまた来て、「書いてくださいよ~」と促した。
不昧曰く「わしは書きたいと何度も思ってるんだけどね、心がすすまなくてね。で、まだ書いてないんだよ」。

 店主はまた来たけれども、未だ出来ないということで、遂には銘書はならなかったというんだね。

 またこの茶店には、不昧が蘆屋と鑑定された釜は如何なるものかと、日々賢愚老少が多くやって来たんだと。
それでこの店はこの為に多く銭を得たんだと云う。

 実は不昧の戯れでね、真の蘆屋ではなかったものを、そういわれたというわけ。
箱書き付けしては、これは失蘆になるからね、そうしなかった。

 その茶店はこの為に利を得たけれどもね。
この侯の高名なこと、推して知るべし。

 今は不昧流といって世に一流の茶道が立つほどになったんだとよ。
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