2020/10/07
続篇 巻之七十七 〈三〉 うみうそ
平戸のある画工が描いた一図を示す。写真の図は天保三辰正月の初、平戸城のきたの釜田浦横島と云う処で捕らえた。
海獣である。
生魚を食べて死魚は食べない。
けれども飢えていると、死魚も食べる。人はその名を知らない。
ある人が云うには。
水豹だろう。漁師はこれを売って、金四両に替えたと。
後、ある本草家に質をして、その意を得たという。
詳しくは以下の通り。
このケモノ、その顔面は鹿に似ていてどう猛ではない。
色は灰黒色である。毛は長くない。つみげ(動物の毛の長さをそろえて、袋などに作る)は、柔らかい。
ひれ肉に毛がある。
大筋は五条あって、人の手の様に屈曲する。その五筋の先に小爪がある。
陸を歩む時、このひれを手の様にしてよく走る。
その尾ひれ、また足の様にして走る。
その尾ひれもまた前ひれの様に五筋あって、左右に分かれて付いている。その中央に小さな尾がある。
生魚を取って食べるは、海中に死魚がないということ。
だから生魚を好む。
漢名 海獺(ウミウソ) 和名うみをそ
このうみをそと云うものに二種ある。
気褐色のものを『とど』と云う。
佐州(佐渡)はとどの島が最多い。
灰黒色のものを『あしか』と云う。
相州(相模)はあしかの島が多い。
二種共によく眠ることを好む。
国によって黃褐色のものをも、あしかと云う処がある。
その大きいものは、一丈(3㍍)位に至るものがいる。
その肉は煎って油をしぼる。油が多い。また味噌漬けにして炙って食べる。
『本草』にある。
大獺、海獺と云うも同じものである。

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