巻之3 〔7〕   たっぴ、中の汐、白上の3つの潮道、難所を渡る

 鳥越邸の隣家川口久助は、当御代替のとき陸奥国の巡見に赴いた。

 1日、わしは陸奥から蝦夷に渡る海路のさがしさ(けわしさ)を問うた。
答えるには津軽領の三馬屋から船を出して、松前に着くとき、船を出した日は風が殊に強く吹いて浪が高いまま日和が悪いだろうと言った。

 船子の話では、この渡りには潮道が3処あるという。
潮が急なので渡ることは難しい。
日和ならば船は潮の為に流れ漂い、渡る事は出来ない。

 だからこのような風力で渡ると言うが、いかにも沖へ出て、急潮の所に着くと、それほど大きな船の逆さまにわきかえり、流れ行く巨浪に堪えられぬ様に見えたが、強風に吹き抜かれた。
そしてその浪をしのぎ、3処の難所を渡り、着いたという。
舟中の苦は云う程でもなかったという。

 かの急潮のところは、たっぴ、中の汐、白上という。
また松前の白上三に登り、海面を臨み見ると、3つの潮道は海面に分かり見える。
その潮行きのところは、海より高くあがって見える。

いかにも海底に危石嶮巌(きせきげんがん、嶮はけわしいの意味)があるので、海潮もこの様なものかと云ったことよ。

西の国の海路では見聞きしない事だった。
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