続篇 巻之22 〔15〕 朝鮮虎が九州へやって来た  その2

一、 背のわたり2尺7,8寸ばかり、首1尺余り、尾2尺7,8寸ばかり、高さ2尺2,3寸ばかりあり。虎の大きなものは、体のわたり1間半ばかりのものもあるという。これはまだ3歳で、籠内に入れて育てられる故、大きくなるかどうか確かめた方がよい。
一、 子を得た時は、猫ほどの大きさなので膝の上で飼い育ててもよい。
一、 声は、ヲ、ンウ、ンとだけいう。犬が呻くに似ている。時により声高で、物すごく真似しがたい声のよし(虎は既に詩文に多い。豹の鳴き声は諸書に書かれていない)。
一、 餌は鳥獣を専ら食い、油少なき魚類も食べるが、腹にあたって良くない。また獣も、猫は似ている故か、くい殺しはするが、しかと食わず。犬は好物である。穀類は一向に食わず。鶏の餌袋など、穀類がある故か、残して食わず。野菜、芋、大根類もすべて食わず。常に1日に鳥3羽ばかり食すると、飽かないが、先ず足りてるようだ。飽くまで食すると、至って静かになって眠る。また食が足りないときは荒れ廻り、食をせめあさっている。
一、 朝を与える時、鶏ならば毛を抜いて、3つばかりに切って食わせること。獣もこのように切って食わせるように。生で与えるならば、おのれで毛をとり食するが、籠の中を汚す故、料理して与えるとよい。鳥獣の骨をかみ砕く事は、例えば人が煎餅をかむように、歯にもさわらむ気色である。
一、 雌雄で見分け方は難しい。改めて見る事を嫌う故、男のようにあるが、飼い主も知り得ない。
一、 世の人は虎は雄で、豹は雌といっている。飼っている人が云うには、虎にも雄雌がある。また豹にも雄雌があるという(飼い人の言う事である。前説は非であるので従うことのないよう)。
一、 蠅蚊ともに近寄らない。
一、 両便とも同じ場でする。きちんとしている。
一、 筑州で大守が見ようと、竹のやらいを結び廻して、その中に虎の子2匹を放した。餌を生ながら与えられると、2匹で争い餌を取るありさまは、猛(たけ)くするどく、びっくりするが、1匹の虎が餌に手をつけ、先んじて食べた方は、退き、やらいのすみに引っ込む。神妙に心清きさまは、こと獣の中でも優れていると云える。
一、 芽は常に丸く、変わる事はない。
一、 飛び上がる時は、4,5間(3.272~5.09㍍)ばかり揚がるよし。
一、 今1匹加島で死んだのは、黄色に黒い星があって、中に穴がなかったという。この度連れてきたのは、毛に黒い輪があって穴がある(『本草集解』に云う。豹の毛は赤黄、文は黒く銭のよう、しかも中が空になり、体のあちこちに見る。これが黒い毛の輪が廻して穴があるということ。穴と云うのは文の拙いこと。また云う。豹の姿は虎に似てしかも小さい。白面に丸頭、自らその毛を抜いている。この文は銭のようで金銭豹という。皮衣の如く。艾(よもぎ)葉の如き者、艾葉豹という。これが黒星で中に穴なしと云う者)。
一、 朝鮮人が語ることを、飼い主がいっている。虎は三子生まれ、必ず1匹は豹である。豹は三子を生み、必ず1匹は虎である。(『集解』に云う。『禽虫述』に云う。虎三子を生んで、1匹は豹を為す。則ち豹は変化する者である。寇氏は未だそれを知らず。朝鮮人の言葉は、思うにここに基づく。だがこれは、虎が豹を産することではないだろう。豹が変ずることと聞こえないか)。
一、 この高さは1間余り、横3尺ばかり。
一、 この度、周防船に便船して参るよし。飼人はみな対州の人である。
上は文政11年子12月、対州から町人等虎児と1匹を籠に入れて持ってきた。そこで質疑をしたが虚実を明らかにせず、いうがままにこれを記す。
      12月15日
      追加
ある人曰く。この獣を筑州前に至り、かの城下では、見物人の中に歌妓がいた。籠に近寄り覗いていたら虎は手を出して、この婦人の髪を掴んだ。婦人は恐れて頭を引いたが、虎は離さなかった。遂に頭髪みな切れて、禿げてしまった。危ない事だが、また可笑(おか)しなことになってしまった。
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