続篇 巻之七 〈ニ二〉 伊豆の沖の無人島

ある人が云った。
このごろ伊豆の沖の無人島に漂流して数年経つ人が帰った後に語ったことを親しく聞けたと云う話の中に、かの無人島は東五六十里ばかりもないという。
その辺りを乗り出して見廻ると、一の島を見つけた。
人も住めるさまで、遥かに臨む見ると日本の人物なので、舟で近づいて見ると、島人も指で招く。
陸に上がって問うと、「この島の名をメッポウ島のと云うが、近頃この島に移り住んだが、日本へ年貢を納めることもなく、稲は年々良く実るので食に乏しくなく、畠も出来る。木綿麻も種から育て衣服に事欠くこともなく、魚鳥はもちろん、草木おおければ、住まいも心任せに処々に造って妻子を養っている」。
「何れの年に、いつの頃から此処に住んでいるのか」と聞いたが、「最近の頃で常州銚子の辺りの某の村から、一夜の間に一村の者と示し合わせて舟を出して来た」と答えたよし。
島の主という訳ではないが、銚子の辺りの某の村に行って、その地の者に知らせようとだけ云った。
さて帰ってその事を語るに、近頃〈ニ十年ばかりも前に起こったとその村の者は云った〉。
銚子海辺の民家、一村の男女一夜の内に行方知らずになったことがあった。
それに違いないて云った者があった〈その処、村名も深く尋ねるほどの知人もなく、それ以上を問わなかった。
メッポウ島というもその輩が名づけ呼んだ名だろうと聞こえてくる〉。
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コメント

No title

年取ってからポツンと一軒家のような山奥に家・田畑を買って暮らすのも、似たような味のあることかも🐝🐻🥝

No title

和賀 さん
ですねー。ちょっとやってみたいけど、自給自足が出来ませんねー。

No title

原田 さんもそのようですか(^^;
周りのひとを見ても、歴史などに興味を持ってあれこれとするひとは、食糧などは買って食べるようですね🍊わたしは時間が足りないのでそうします。
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