三篇 巻之20 〔13〕 天に偽るものはなし

 また先年に云ったことを思い出したので書き付ける。
 これもまた先年、東照宮御神忌のとき、京から公卿が多く下向あって、帰途東都の大城にも登営があった。
このとき伶工(れいこう、楽人)に仰せて舞楽があった。
この折から、予め諸有司が評議するには、「舞台には雨覆いがなくては、当日もし雨天なら如何なものか」と、伶工を召して尋問した。
答えるには、伶家では、「昔から朝廷の舞台に雨除けの沙汰はございません。また雨が降った例(ためし)もございません。だからこの度も定めて雨天にはならないでしょう。雨覆いを用意されるには及びません」。

 果たしてその日は天晴れたと。
行智曰く。
「これは人心に決定して動かないことは、天もまたこれに随うこと。『羽衣』の謡に、いや疑いは人間にあり、天に偽るものはないものであると、天人が云うのは実に凡夫は恥ずるものだと覚える」と。

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