三篇 巻之35 〔12〕  世の諺、色々と

 世の諺に、士(サムライ)は、速飯、急屎(ハヤグソ)、迅歩(ハヤバシリ)と謂うが、如何にもあるものだ。
わしが自らのうえで云わんとするのはー。
はやくより歯が落ちれば、喫食は速くない。
遅々と時を移す。
また痔を患えば、厠に往きても長く在る。
また歩行も、この疾病で迅速ではない。
これらは泰平の今憂いとしない。
けれどかつて、遠祖公法印殿(松浦鎮信公、11549~1614、戦国から江戸時代初期大名)の朝鮮在陣の記事を観ると、如何なれば7年の間、この月日を過ごされたか。
羨しくも、慕わしくも渇仰(深く慕う)の念が絶えない。
またかの三条のことは、故武の加藤清正が云ったこともあると聞く。
何の書に載っているかは、今知る術がない。
またつかぬことだが、小笠原逸阿(当時哥人)が、小川町に住んでいた頃、隣の家が失火したことがあった。
その時の口占(くちずさみ)に、

  隣なりける家より火いでて、
  栖(棲、巣)を走りのがるるとて、
                      逸阿 
  とぶひのの野焼けふりの風さきに、
  かくろひ(隠れ)かねてたつ雉子(きじ)哉。
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