2020/10/02
続篇 巻之三十一 〈一〉 開運大黒天
一両年前、隣人の某が大黒天の尊像と云って示した。摺り版の画影である。
曰く。「この像は当田安亜相卿がこの度御昇進の御喜びに、徳廟(何代の亡き将軍か不明)御自画があったのを亜相卿が手写しなされた模刻のものである。
かの御家臣某より口上を添えられ、あたしに贈り与えられたんですよ」。
包み紙に題して云うには。
出世大黒天、中の御画影は①の如し。
②の包み紙の背書きに云う。出世長寿大黒天は、この御影を受ける人の心願成就を候らば、一枚は表具して永年敬し、一枚は板行にして二千枚摺り、一人に二枚ずつ千人にあたえること」。
しかるに今年また施版の絵像を示す人がいた。包み紙に題して云う。
開運大黒天、中の御影は③の如し。
包み紙の背書きに云う。
「開運出世大黒天、この御影を受ける人、心願成就したら、一枚を表装して、一枚を上木して千枚摺り、一人に二枚宛あたえること」。
この出板した人は、表御祐筆組頭森伝右衛門である。先に田安亜相卿より賜ったと云う。
傍記号の小異があるのは施者の心得である。
この人は、寛政の前世に名があって、持明院殿筆法を伝えた右衛門尹祥と称するその孫であると云う。
組頭にはこの春昇進したとのこと。思うにその喜びに印布したところであろう。



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コメント
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2021/01/08 13:36 by 高橋 URL 編集
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ここでは大黒天のお顔が徳廟とありますので、亡き将軍のお顔みたいですね。各地でお顔が違うのでしょうね。各地のお顔も見てみたいですわ。
2021/01/08 13:36 by 原田 URL 編集
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2021/01/08 16:17 by 高橋 URL 編集
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今日は何を読もうと思って、パラパラとめくったら見覚えがあるのが。。。
2021/01/08 16:18 by 原田 URL 編集
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2021/01/08 16:18 by 高橋 URL 編集
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甑島、里八幡のオキョードン(お経殿)のお札、昔はシトギと一緒に配りました。
2021/01/08 16:19 by 塩田 URL 編集
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高橋さんの笠間稲荷由来、甑島は出雲由来ですね、神さまからの言葉として
お経と(神仏習合の時代ですものね)シトギと共に配られたんですね。
甲子夜話版は大黒天のお顔が徳廟、つまり何代目かわからないけれど、将軍のなんですね。こちらは俗っぽい印象を受けました。
稲荷神社系列、出雲大社系列、色んな流れがあったのでしょうか。加えて将軍さまとは、相当庶民に馴染んだ御札だったのではないでしょうか。
当時は皇室より将軍家が庶民には知られていたと何かで読みました。
2021/01/08 16:20 by 原田 URL 編集
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2021/01/08 16:21 by Saitou URL 編集
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甲子夜話もそうですが、博物館、古い町並みから昔の人々からのメッセージを読み取って少しでも、前向きに行きたいですね。
2021/01/08 16:22 by 原田 URL 編集
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ごりえき と言いそうになります😄
2021/01/08 16:22 by 塩田 URL 編集
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2021/01/08 16:23 by 塩田 URL 編集