三篇 巻之71 〔1〕 菅公の燈火

 ある人曰く。
 亀戸の天神の楼門の下の掛けた風月燈という物は、基本は昔時の頼政のときの物で、頼政が朝廷でぬ怪鳥(ヌエ)を射たとき、宮中の燈火(トモシビ)はみな滅(キエ)た。
だがこの燈篭は消えなかったという。
 これは何の故か、何の書に載っていたかは分からないが、聞くままに記す。
 またこの燈の菅廟(菅原道真公廟)にあるのかは、わしは知らない。
だから人を使って視せるために、その形を図にして帰る。
わしはすなわち往ってよく診ようと思ったが、嬾情(おっくうな気持ち)からまだこれを果たしていない。

 〔名曰く〕亀戸、菅聖廟、風月燈銘。
            ああ、菅の聖霊徳は晞(明け)らかなるばかり、
            ここに鉄燈を勢して、永く廟祠に置く
            形は古式に模す、頼政の遺規、
            名は風月より高く、煗煗(ダンダン、暖か)たるその輝り、
            公の霊徳に与(よる)と、照曜は期(かぎ)りなし。
        文政甲申(7年、1824)冬十月
                                  成瀬美道

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