続篇 巻之18 〔4〕 遊女花紫の『祝なおし』

 河東節の浄瑠璃に、『松の中(うち)』と云うものがある。
この浄瑠璃が起こったのは享保(1716~1736)の初めのことだという。
新吉原町春の初めのことで、玉屋山三郎がかかえていた遊女は、その頃名高い花紫と云うが、正月二日に祝儀を云って、仲の町を道中するとき、如何したのか、緋縮緬の下帯を路に下ろした。
それで自ら人目を恥じて、かつ歳のはじめからよからぬ徴(しるし)かと心に思うと、竹夫人と称する幇間(ほうかん、助けの事、このように呼んでいるが、男子にとって、この時に用いられたものという。この作のもの多しと云う)が折節居合わせた。
世に謂う『祝なおし』と云うことを、一時の興にこの浄瑠璃を作りなおしたのを、今流転してこの盛りをなせる。

 このようにこの文句は、みなかの女閭の春の初めのありさまを作った所である。
だからこの文句に中の、かの傾城が墜裾のことを言い含めていると。曰く。
 ちょっと百ついたまりの数、とんと落ちなば名はたたん、どこの女郎衆の下紐を、結ぶの神の下心。
 前に記した勝山の墜髻(たぶさ、もとどり)のこととは懸隔か。
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